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現代ウイグル語のたくましい現在

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今日からしばらく、8月の新疆で見聞きしたことをちょいちょい書いていこうと思います。リアルタイムでレポートすることも考えないでもなかったのですが、あちらではあまり時間的・体力的に余裕がありませんで、ひと月遅れのレポートということになります。まあ気楽におつきあいください。

深夜ウルムチに到着し、翌朝安宿から外出して延安路界隈(農業庁~タタールモスクあたり)の変貌ぶりに些か愕然と致しました。以前はなかった高架の道路は走っているし、団結路まで軒を連ねていたウイグル語VCDのお店もことごとく撤去されており工事中。まあ街がきれいに整備されること自体は大変結構なのですが、そこで営まれていた商売や生活がどこへいくのか(いったのか)、その点が大いに気になるところです。個人的には現代ウイグル語VCDのお店の絶対数が減ってしまい、大変ブルーになりました。

さて、意気消沈して通りを横断するために地下道に入ったら↑上のような広告が目に入りました。irpanという会社は以前から現代ウイグル語の電子辞書を生産しており注目していたのですが、まさかここまで発展を遂げていたとは思いませんでした。PDAからネットブック、そしてちゃんとしたラップトップPCまで生産しているとは(!!!)お見事です。もちろん、筐体や部品はまさかカシュガルの職人街製(^^;)というわけではなく、中国内地から流れてきたものを組み立てているのでしょうけれども、最初からウイグル語化されたOSやソフトウェアを組み込んである(らしい)点がきわめて注目されます。

無論、現在のウイグル人の置かれた現実的な状況を勘案するならば、もっとも賢明な選択は漢語OSのPCを買い、補助的に現代ウイグル語のソフトウェアや入力ロケールを組み込むということでしょう。仕事やネットで得られるさまざまな便宜を考えると、漢語の方が圧倒的に「使える」わけですから。そこをあえてハードからはじめ、すべて現代ウイグル語ベースで提供するというところにirpanの矜持を感じます。

irpanだけではありません。2年ぶりの訪問で目を見張ったのは、「現代ウイグル語」プロダクツが以前にもまして独特の発展を遂げていることでした。発展というよりは「露出」といったほうがいいかもしれません。確かによく知られているように、教育の分野で現代ウイグル語の旗色は大いに悪くなっています。しかし、制度上担保される部分では、依然として現代ウイグル語は地域公用語としての地位を失ってはおらず、(テレビ、ラジオ)放送、政府布告、商店の看板、空港を含め公共交通機関のアナウンスなどは厳格に漢語とのバイリンガル、あるいは英語とのトリリンガルでの提供が厳格に行われているのです(あのコカ・コーラだってウルムチに工場ができてからは現代ウイグル語も表記されています)。

とりわけ今回感心したのは電子機器、電気製品の「現代ウイグル語化」が結構進んでいることでした。以前からケータイが現代ウイグル語化されていた(アラビア文字でメールも打てる!)ことは聞いていましたが、商店のレジやレストランのウェイターの持つPDA端末も現代ウイグル語になっているのには些か驚きました。下にお示しするのはカシュガルのお洒落カフェのレシートですが、ラグマンやポロを食べてこういうレシートをもらえるとは思いませんでした。

Bilingual_receipt
これ以外にも、目新しいものとしては表示も何もが現代ウイグル語化され、ウイグル人好み(と思われる)赤や濃紺のボディにアラベスク模様があしらわれた大型電気冷蔵庫なども発売されていました(結構売れているらしく、カシュガルのある普通の家庭で客間に鎮座しているその冷蔵庫を見かけました)。調べてみたら他にもいろいろ発売されているのかもしれません。現代ウイグル語プロダクツは要注目です。

世間で言われているように、現代ウイグル語の置かれた状況は確かに厳しいかもしれません。しかし私見では現代ウイグル語話者が享受している現在の言語環境は、それでもウズベキスタンのウズベク人やカザフスタンのカザフ人、クルグズスタンのクルグズ人たちよりはよく整っていると思います。それはひとえに新疆の出版人やirpanのような民族資本の矜持の発露として捉えることも可能でしょうし、(違うという人も、信じたくない人も多いでしょうが)中国の少数民族政策の周到さといってさえ良いと私は思います。まあ、この点はまだまだ検証が必要でしょうが、今回の旅は現代ウイグル語のたくましさ、元気なところを確認できた旅でもありました。


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