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第8回中央アジア古文書セミナー

毎春恒例の中央アジア古文書セミナーに行ってまいりました。今年は主催者の都合により、年度を越した4月の開催で、週末の京都は観光客で溢れんばかりの賑わいでした。京都外国語大学の傍らを流れる天神川の桜は今まさに満開で、はからずも京都の春も体験することができました。文書セミナー会場も新年度ということで初々しい京都外大の学生さんで賑わっており、いつもとは雰囲気の違う大学らしい京都外大を見ることができました。

さて文書セミナー。今回のメニュウは以下の通りでした:

10:30-12:00
講演 Bakhrom ABDUKHALIMOV
(ウズベキスタン共和国科学アカデミー東洋学研究所所長)
「ウズベキスタン共和国科学アカデミー東洋学研究所の
古文書史料について」(英語)

13:00-14:30
古文書講読 矢島洋一「ホラズム人民ソヴィエト共和国期文書」

14:45-16:15
古文書講読 磯貝健一「中央アジア各地のファトワー文書」

16:45-17:30 総合討議
18:00-19:30 懇親会

まず午前中は東洋学研究所所長のアブドゥハリモフ先生のご講演で、ウズベキスタンにおける文書史料の研究史と、研究所所在文書の概要をご紹介いただくとともに、12-3世紀に成立した「百科全書」的集成(アラビア語)の一部に含まれる文書用例集についてご報告いただきました。お話された内容は大変包括的で貴重なもので、堀川先生が発言されたように公刊が期待されます。私は個人的には前にちらっと触れたフィトラトやイブラヒモフの文書カタログ(~書式集)がどういう位置づけがなされているのか、という点にいささか関心があったのですが、ぼうっとしているうちに聞き逃してしまった(それとも言及されていなかった?)のが悔やまれました。

アブドゥハリモフ先生のお話を伺ううちに抱いた感想。周知の通りウズベキスタンには膨大な文書が東洋学研究所や各地の博物館などいくつかの拠点に収蔵されています。そういう文書類の情報を一本化して、対照研究を可能とする環境の整備がおそらくは当面の問題なのではないかと個人的には思います。まずはそういうデータベースの構築が求められるでしょう(当事者にやる気があるのかどうか知らないのですが…)。さらに欲を言えば、文書のテキストをすべて処理可能な形(つまり電子テキストへの入力ということです)にすることができれば、より着実な形で(たとえば計量的手法で)当時の法制度や契約文書の言語について物が言えるようになるはずですし、よりミクロなレヴェルでの実態把握も可能になるでしょう。これ、むしろ総数が知れている新疆文書の方で先に実現すべきかもしれませんね。

午後はまず矢島さんのご指導のもと「ホラズム・ソヴェート人民共和国(原語Khwarazm Khalq Shuralar Jumhuriyati)(1920-1923)」期のワクフ関連文書を講読しました。具体的にはワクフの実際の運用をめぐる請願書('arz)と政府側の発給した証明書(shahadat name)計3点が取り上げられ、詳しく解説が加えられました。序数接辞にla-が前置する(あるいは-lanchiという序数接辞?の)形や「お役所」にkhidhmatを当てるなど、私がいつも読んでいる新疆文書とはいくぶん違う文言の数々は大変勉強になりました。

とくに「ふーん」と興味深かったのは、矢島さんのハンドアウトで示されたホラズム人民ソヴェート共和国憲法(1920年4月)に盛り込まれたワクフ財産に関する条文です。第14条にそれは定められており、ワクフ財産に関する「すべての」業務が「まったく」教育、文化業務に関する、とうたわれており、したがって当該業務は教育委員会の管轄とされています。おそらくこれは常識の範疇に属することで、私は単にモノを知らないだけだと思うのですが、ここでいう「ワクフ財産」の意味するところが正直私には十全に理解できませんでした。この条文に盛り込まれた見方は通時代的に受け入れられうるものなのでしょうか。

同様の措置は実は新疆でも行われていて、たしか1930年代にはウイグル文化促進会なる組織がワクフ財産と関わりを持っていたはずです。しかし、そこで問題にされているワクフとは、その実どういうものを具体的に指しているのか?新疆のケースについては「解放」後の農村調査報告でいくらか説明がなされていますが、それでも実態はやはり良くわかりません。
(いっておきますが私が問題にしているのは、一般的なワクフの実体-たとえばEIなどで詳細な解説が加えられているような-などではなくて、あくまで個別事例での、個別的な意味の範疇の問題です。これは賢明な方のご教示を乞いたいところです。

続いて磯貝さんのファトワー文書のレクチャーはいつもながら詳細で啓蒙的なものでした。とりわけ今回はヒヴァのテュルク語によるファトワーが示され、いつもはペルシャ語で目を回しているファトワー文書の細かな構成、用語がよく理解されたのは収穫でした。たとえばajmainとrahmatが略記された形とかba shari'atのやる気の無い(?)略記体などはいくら生真面目に読んでも理解できない種類のものであり、耳(目)学問でも、出席した価値はありました。


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