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CESS 10th Annual Conference, University of Toronto(1)

今年もCESSでパネルを組織、お粗末な報告をしてまいりました。
今回の開催地はカナダのトロント。野球のメジャーリーグよろしく、CESSは合衆国のみならず、カナダをも包含した「北米の学会」なのだということをやっと知りました。まあ、トロントは五大湖地方の北側に位置するまちですから、以前の開催地ミシガンとも自然環境がよく似ているようです。違いはフランス語がいたるところで併記されているところと、ミシガン(アナーバー)やデトロイトにくらべ、明らかに文化の香りがぷんぷんする大都会だというところでしょうか。おりしもROM(Royal Ontario Museum)では「死海文書(Deadsea Scroll)」展が開かれていて、学会ついでに死海文書詣でができたのも幸いでございました。

今回の主催機関はUniversity of TorontoのMunk Centreに本拠を置く欧州、ロシア、ユーラシアセンターで、風格あるMunk CenterとTrinity College、そして比較的新しいLarkin Buildingの3ケ所(建物はお互いに隣接している)でパネルが行われました。会場が比較的近場に集中していると言うことは、同じ時間帯に並行して行われる2つのパネルに部分的に出たいときなど都合がよろしく、今回の会場配置はそういう意味でよく配慮が行き届いているように思われました。

Trinity
Trinity College, University of Toronto

今回の私たちのパネルは"End of the Age of Epics?: Historical Role of the Oral Literature in Central Eurasia and the Neighborhoods"と題するものでした。口承文芸が書かれたテクストに固定されることによって本来もちえた創造性、拡張性のようなものを失いつつあるのではないか、換言するならば「歌」の伝統は死につつあるのではないか、というかねて指摘されてきた「懸念」に対し、我々なりにその答えを提示しようと言う、格好よく言えば果敢な試みでありました。このなかで私は自分としては古い、10年来取り組んできたいわゆるアブドゥラフマン叙事詩に関する報告を行いました(詳細はいずれペーパーの形でお示しできると思いますが、ここでは省略します)。私以外にはアルパミシュ、ブラフィ(バローチスターン)そしてニヴフ(サハリン)についての報告があり、反響も上々でまあ悪くなかったのではないかと安堵いたしました。席上、旧知のD先生から「こういうパネルは来年もやってもらいたいねえ」とのお言葉を頂戴しましたが、これはたぶん「顔を洗って出直してきやがれ」と言う意味ではなく、もっといろいろな方の報告を重ねてこういう枠での議論を深めていけたらいいな、と言う前向きなご意見であろうと私などは解釈しています。来年もこういうパネルができるかどうかは分かりません(旅費も捻出できるかどうか分からないし!)。しかし、何らかの形で口承文芸と歴史の関係は末永く議論を積み重ねていきたいものです。

今回のパネルは私がオーガナイザーとして申請を行い、司会(chairperson)とコメンテイター(discussant)は紆余曲折の末、CESSの事務局長(Director of the CESS Secretariat)として毎回の会議を実質的に取り仕切っているダン・プライア(Daniel Prior)さんにお願いしました。学会運営はとても骨の折れる仕事なのに、そのなかで時間を割いて私たちのペーパーを読み、セッションを効率的に誘導してくれたダンには本当に心から感謝したく思います。

Fuller
Keynote Address

我々のパネルの後で、会場をキャンパス内の劇場に移し、基調講演が行われました。今回の講師はCIAなどで活躍した合衆国有数の論客グレアム・フラー氏で
"The New Face of Eurasianism"と題するその講演はタイトルに違わず国際社会のなかで今後中央ユーラシアがどう動いていくか、何が期待されるかという壮大な問題につき持論を展開していくと言うものでした。なにしろ合衆国の政策にも一定の影響力のある方のお話ですから、お話自体何と言うか高飛車なイメージがあり、みなさんご託宣を仰ぐような面持ちで聞き入っておられたように思います。新疆問題、はては日本の鳩山新政権に対する期待のようなものも(しかも第二次世界大戦以前からの数十年来の中央ユーラシアに対する日本の関心の延長上に位置づけて、とまで言っていたような)ちゃんと織り込まれていたのはまあお見事です。

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