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CESS 10th Annual Conference, University of Toronto(2)

Presidential Round Table: The July 2009 Urumchi Riots and Perspectives in Han-Uyghur Tensions

今回のCESSでもうひとつ個人的に注目されたのは、先だって7月はじめに新疆、ウルムチで発生した騒擾について地域研究者の立場から冷静にこの問題を考えてみようと言うラウンド・テーブルがPresidential Roundtableと言う枠組みで開催されたと言うことです。パネルになるかラウンドテーブルになるかはよく分からないが、こういう枠を設定すると言う話はだいぶ前から企画者のJ.Millward(CESSの次期President、Georgetown大)から連絡が入っていました。たぶん事前に話が漏れるとさまざまな方面から想定できない厄介が持ち上がる恐れがあるため、公式には開催の直前までこの企画はアナウンスされず、結果的には「サプライズ企画」のような形になったのでしたが…。

Trinity Collegeの会議受付(+レセプション)にも使われた中程度の広さの部屋で開催されたラウンドテーブルは人の集まりもなかなかよろしく、座長のミルワードがはじめに簡単な挨拶と、報道から伺われるあの事件の基本的な推移を紹介した後、3名のパネラー(インディアナ大のBovingdon、ジョージワシントン大のRoberts、グリフィス大のClarke)がそれぞれの立場から報告を行いました。それぞれの報告は研究者らしく、できるだけ直接的な情報から最低限分かるファクトを洗い出し、状況の分析を試みたものでした。

私のリスニング力は乏しいので何ら細かなことは記憶に残っておりませんが、大方の印象としては、専門研究者であっても、また当事者であっても、今般の事件の全容を把握することは誰一人できていないし、おそらくそれは不可能だ、というあたりがまず第一の結論なのではなかったかと思います。全然イケテル結論ではないのですが、誠実に提示された情報を史料批判を念頭に置き検討すると、その辺に落ち着かざるを得ないと言うわけですね。さらに中国政府の対応、そして数々の声明そのものを検討の対象においた場合(こちらはウルムチで何が起こったか、と言う個別「事実」に比べはるかに検討しやすい、手堅い材料と言えます)、それは種種の矛盾に満ちており、少なくとも起こった事件に対し、中国政府当局側は相当動揺、混乱を見せていたことが窺われる、ということも指摘されていたように思います。

報告の後でカナダのウイグル人組織の方がまず発言を求め、いささか声高にウイグル人組織が主張する今般の事件の「真相」についての見解を訴えました。それに続きウルムチ出身の漢族の学生が漢族側の立場から発言しました。幸い司会進行役のミルワードがそれぞれの発言をうまくさばいてくれたので、そうした「主張」が不毛な議論に発展するのは回避されましたが、それにしても「仕込」ではないかと思いたくなるほどに「研究者」「ウイグル人」そして「漢族」のものの見方がきっちり提示されたのはなかなかの見ものでした。

さまざまな思惑からさまざまな「事実」や「言説」、そして「主張」が氾濫する現下の状況にあって、大勢に流されること無く、冷静に事実を見極めることが必要だ、と言う考え方はたいへんまともなものの見方だと思います。たぶん大方のマス・メディアや人権擁護運動家の方々などは研究者のこうした態度が相当気に入らないでしょうし、「人でなし」「役立たず」などと罵倒することでしょう。しかし、少なくとも私はそういう一種デクノボーたる勇気(実はこれこそが「ダンディズム」ともいえるのですが)を研究者はもつべきであるし、長い目で見ればそうした態度を貫き生産された研究成果こそが、真に人類社会に貢献することができる(ひょっとしたら…かもしれない)のではないかとも思うのです。今回のラウンドテーブルはそういう意味でCESSやパネリストに対する信頼感のようなものをはぐくむことができてよかったです。


Canada
カナダ土産画像。いかにもカナダです。
(Toronto, High Parkにて撮影)


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