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Dautcher,J., DOWN A NARROW ROAD

Dautcher, Jay, Down a Narrow Road: Identity and Masculinity in a Uyghur Community in Xinjiang China. (Harvard East Asian Monographs 312), Cambridge(Masss.) and London: Harvard University Press, 2009, 349p.

私事ながら、著者ジェイ・ドゥチャール氏と私は同じ時期にウルムチの新疆社会科学院に「滞在」しておりました。しかし氏は実の所もっぱらフィールドワーク先のイリ地方にいらしたため、親しく会ってお話を伺えたのは私の帰国直前の一回きりではなかったでしょうか。お会いした時にドゥチャールさんから「これが私のe-mailアドレスです」とアドレスをいただいたのですが、私はそのときe-mailなる言葉すら知らず、「何だこの呪文は」と戸惑いを覚えたことが思い出されます。そういう意味において、本書の著者ドゥチャール氏との出会いは私にとってはe-mailとの出会いでもありました。まったく個人的な思い出で恐縮ですが、本書を受け取ってまずそのことが思い出された次第です。

ともあれ、著者ジェイ・ドゥチャール氏はUCLAで人類学を学ばれた方で、現在はIndependent Scholarとのこと。『狭い小路(tar kocha)を下って』と題された本書は氏の学位申請論文を下敷きにしたものでしょう。

まず目次を示します。

序章
第一部 空間と場のローカル・アイデンティティ
第二部 ジェンダーとライフ・サイクル
第三部 シルクロードの市場と商人
第四部 マハッラにおけるイスラーム:ウイグルの宗教行為の社会的側面
結語

本書は主としてイリ地方(とりわけグルジャこと伊寧市)での著者自身によるフィールドワークの成果をまとめ上げたもので、マハッラでの市民生活を通じてウイグル社会を読み解こうとする大変魅力的な著作です。本書冒頭部分でStevan Harrell氏が語るように、本書は新疆社会を扱った人類学の論著として生真面目に読んでもまあいいのですが、素直に生き生きしたウイグルの人々の生活をつづった「読み物」としても十分に読める作品でもあります。

昨今、新疆を扱った研究や書籍は増えています。しかしドゥチャール氏のように実際に新疆社会の中に入り、日々の暮らしを丹念に追ったものは大変に希少で、その価値はきわめて高いと思われます。

なにしろ昨日受け取ったばかりなのでまともな感想文は書けませんが、ここではともかくも、本書がおおいに私好み(ストライク!)の著作であることだけは強調しておきたく思います。

【追記】その後、早稲田大学イスラーム地域研究機構の『イスラーム地域研究ジャーナル』vol.2(2010)に本書の短い紹介を書きました。記事はこちらをご覧下さい。


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