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松長昭『在日タタール人:歴史に翻弄されたイスラーム教徒たち』

松長昭『在日タタール人:歴史に翻弄されたイスラーム教徒たち』(ユーラシア・ブックレット No.134)東京:東洋書店、2009年、63頁。

著者の松長さんからご恵贈いただきました(松長さん、どうもありがとうございました)。

さきの重厚な論集掲載論文につづき、松長さんの健筆ぶりには全く頭が下がります。とりわけ今回はこれまで私の中ではぼんやりとしか把握できていなかった「在日タタール人」の歴史像がコンパクトにくっきりと示されており、目から鱗が落ちるような心持ちで読ませていただきました。

例によって以下に目次を示します:

まえがき
第一章 在日タタール人コミュニティーの成立
第二章 クルバンガリーと東京回教団
第三章 イスハキーの訪日とタタール人の組織化
第四章 クルバンガリーの追放と在日タタール人の統一
第五章 戦時下のタタール人コミュニティー
第六章 新天地を求めて
結びにかえて

わずか63頁という分量に、よくぞこの複雑な物語を詰め込んでくれた、というのが私の率直な感想です。本書が扱う「在日タタール人」の問題は、言ってしまえばロシア革命から第二次世界大戦の終結までの僅か30年ほどの出来事ではありますが、私見ではその「物語」はさまざまな背景、ファクターが複雑に関係しているように思われるのですね。ロシア革命、ソ連の極東政策(民族文化政策)、満洲問題、日本におけるイスラームと政府の対イスラーム政策(イスラーム世界への戦略)、日本における「興亜」の運動、大陸での陸軍の諜報活動、そして東洋学(就中言語学、イスラーム学、歴史学)などなど、話はどこまでも面白く、またどこまでも広がっていきそうです。本書はいくぶん抑え気味の筆致で手際よく要点を整理し、在日タタール人たちの歴史像を浮かび上がらせることに成功しています。これは何よりも(今はみな過去へと去ってしまったわけですが)あのタタール人たちに対する誠実な態度の表れとも言えるでしょう。

以上、舌足らずながら落手のご報告までに。


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