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東巌夫『騎馬民族がもたらした日本のことば』

東巌夫著『騎馬民族がもたらした日本のことば』(東京:露満堂、2009年1月、321頁)

著者から恵贈いただきました(東さん、ありがとうございました!)。いちど拙宅にお送りいただいたのでしたが住所が転居前の前の住所だったため、あらためてAA研までお送りいただいたよし。お手数をおかけしました。

著者東巌夫さんは1924年鹿児島県生まれ、と奥付けにありますから本書は御年85歳の著作ということになります。東さんとは10年近くまえ、外語大が北区西ヶ原にあったころ、新免康さんの主宰になる現代ウイグル語の読書会で初めて知り合いました。当時すでに本書の準備に取り組んでおられ、その熱意、こだわりに私はただ驚嘆するばかりでした。今般そのお仕事が本書のリリースと言う形で結実なさったわけでして、心よりお祝いと慰労の言葉を申し上げたく思います。

本書の目次は以下の通りです:

序論
Ⅰ生活の基本となったことば
Ⅱ日常的な身近なことば
Ⅲ古代テュルク語から日本語への流れの深層

本書の趣旨はその帯にあるように「現代ウイグル語と日本語の古典や方言など豊富な実例を挙げてことばの類似を見つけ出し、独自の考察を重ねた」著作であると言うことに尽きます。具体的にはテュルク語の「黒」にあたるqaraと日本語の「くろ」の類似性とか、「山」を意味するtaghと「岳、塔、峠」の類似性とかですね。本書はそうした類似語彙を可能な限り抽出し、「古代テュルク語から日本語への(ことばの)流れ」を指摘するわけです。

私の知る限りでは、こういうアプローチは言語学ではかなり前から学問の問題として扱わないことが常識であったように思います。つまり、比較言語学において問題とされるのはまずもって言語の構造(音韻体系や統語論)のほうでして、語彙の類似でもって言語の関係を云々するのは、ややもすると民間語源(Volksetymologie)に陥りかねない、という立場ですね。そういう意味からすると、本書はおそらくは今日の言語学とはいささか異質なもの、次元の違うものを目指していると言えるかも知れません。

私の立場から(茶化しているわけではなく、大真面目に、かつ誠実に)申し上げられるのは、個別のことばにふれる機会を提供する、と言う意味では本書は十二分に面白く、楽しく読み進めることができるということです。学問的な理解として相互の関係がどうかという議論はひとまず措いて、現代ウイグル語のことばと、(必然なのか偶然なのかは分かりませんが)それと音の似た日本語のことばについて丁寧に説明された本書は読みやすく、興味を持って読み進めることが出来ます。

こうした考察を積み重ねた著者のご苦労はいかほどのものであったでしょう。帯にも(どなたのお言葉なのでしょう?"U"って誰?)書いてありますが、そのご努力は尊敬に値するものだと私も思いますし、それを読む機会を与えてくれた著者東さんには心から感謝申し上げたいと思います。

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Comments

こんにちは。
ロス・アンジェルス在住の大湾節子です。

中学時代の恩師・東巌夫先生の悲しいお知らせを頂きました。
東先生の思い出の記事を下記のブログに載せました。
お時間がございます時にご笑覧ください。

素晴らしい恩師に出会い、心から感謝しています。

http://ameblo.jp/romantictravel

2016-04-25 03:41:52
思い出の1枚の写真から、恩師・東巌夫先生を偲ぶ 1
テーマ:├出会った人もいろいろ

2016-04-25 03:23:20
思い出の1枚の写真から、恩師・東巌夫先生を偲ぶ 2
テーマ:├出会った人もいろいろ

Posted by: 大湾節子 | 2016.04.27 01:58 AM

こんにちは。
お知らせ、どうもありがとうございました。
またブログも急ぎ拝読いたしました。

東さんに最後にお会いしたのは、今手控えを見直しましたら、2003年秋、仙台の「内陸アジア史学会」大会の会場ででした。もう13年もお目にかかる機会がなかったのかと、内心驚いております。

ウイグル語の読書会でご一緒したころが懐かしいです。
ご冥福をお祈りいたします。

Posted by: 菅原純 | 2016.04.27 05:46 AM

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