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菅原睦『ウイグル文字本『聖者伝』の研究Ⅱ 日本語訳及び註』

菅原睦『ウイグル文字本『聖者伝』の研究Ⅱ 日本語訳及び註』 神戸:神戸市看護大学、2008年、401頁。

日頃お世話になっている、というかご迷惑をおかけしている菅原睦さんからご恵贈いただきました。

本書は昨年出版された『ウイグル文字本『聖者伝』の研究Ⅰ 序論と転写テキスト』につづく、菅原さんの博士学位申請論文をベースにしたご著作の第2弾です。ここにある『聖者伝』とは、かのアッタール(Farid ad-Din Attar)Tazkirat al-awliyaにほかならず、新疆でも広く読まれた聖者伝の集成でして、それがまるまる日本語で読めるようになったことは大変喜ばしいことです(もっとも、それは著者の菅原さんのまずもって意図したことではないのですが)。

この研究は15世紀に書写された『聖者伝』(原典はペルシャ語)の、あるユニークなテキストを扱っています。どの辺がユニークかといえば、それがテュルク語に訳されているのはまあよくある話なのですが、アラビア文字ではなくて、何と当時復古的に用いられていた「ウイグル文字」(!)で書かれているということなのです(その写本は現在フランス国民図書館に所蔵されている由)。著者はペルシャ語原本との比較の上でウイグル文字写本の成立プロセスを推定し、かつ文字表記、語彙(借用語)、音韻、形態、統語等さまざまな角度からその写本テキストを検討し、その言語的特徴を炙り出しています。こういうのをネタばれ、と言うのかどうかは分からないのですが結論はここには書きません。ご関心の方はぜひ本書(第一巻)をお読みいただきたいです。

菅原さんのご研究はきわめてオーソドックスな、つまり当分色あせそうもない手堅い言語学研究、という印象を私は勝手ながら持っております。本書は、その手堅さが横溢した読み応えのある研究書だと言えるでしょう。


【付け足し】
今回いただいた日本語訳をざあっと読んで、私が大変興味深く感じられた点としては、アッタ-ルがいわゆる12イマームの第6代目であるイマーム・ジャーファル・サーディクに格別の扱いをしている、という点です。もちろん、これは言語学研究の本書の意図するところでは全然ありませんがたいへん気になりました。実は新疆~中央アジアのあるジャンルの書物は紋切り型にどれもイマーム・ジャーファル・サーディクへの頌句から始まるという伝統(でしょう)があります。6代目イマームはどういう意味において特別なのでしょうか。どなたかこの点、ご教授いただけましたら幸いです。

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