« 辞書編纂はつらいよ-その2(なぜ歴史研究者が辞書を作るか) | Main | Uighur.jp新装開店 »

『ターリーヒ・ラシーディ』附編

ジャリロフ・アマンベク、河原弥生、新免康、澤田稔、堀直『「ターリーヒ・ラシーディ」テュルク語訳附編の研究』(東京:NIHUプログラム「イスラーム地域研究」東京大学拠点、2008年3月、372+171頁)


本日拝受いたしました。著者の皆さんのご高配に感謝申し上げます。

本書は現在タシケントの東洋学研究所に所蔵される『ターリーヒ・ラシーディ』附編写本の校訂本で、ファクシミリ、テキスト、和訳、注釈、地名・人名等索引(カタカナ/アラビア文字)そして詳細な解題(研究)からなっています。

『ターリーヒ・ラシーディ』は、周知のとおり16世紀にミールザー・ハイダル・ドグラートが著した史書でして、当時の中央アジアにおけるモグールの活動が活写された重要史料としてよく知られています。本書はその『ターリーヒ・ラシーディ』の一写本に附編として追記された新たな歴史著作であり、『ターリーヒ・ラシーディ』の記事の最後の時代(1540年代)から1830年代までの3世紀あまりの時代をカヴァーしています。実はこの時代は現在の新疆にあたる地域を扱った歴史においては史書が極めて不足した暗黒時代ともいうべき時代でして、現存する著作は片手で足りるほどのお寒い状況にありました。本書の刊行はその意味で当地の歴史を研究する上で極めて画期的なことであるといえるでしょう。

本書の構成は以下の通り:

英文摘要
はじめに
目次
凡例(解題、翻訳、注)
I. 解題
 『ターリーヒ・ラシーディ』テュルク語訳附編の概要(ジャリロフ)
 先行史書『ラキーム史』からの翻訳に関する一考察(河原)
 東トルキスタンの先行史書との比較(澤田)
 18~19世紀のベグたちに関する叙述とその傾向(新免)
 1836年のワクフ文書(堀)
II. 翻訳・注
III. 参考文献
IV. 索引
V. 「附編」の写真
凡例(テキスト)
アラビア文字テキスト

この附編の著者は一名ムハンマド・シャリーフ・ピールなる人物(かのサトゥーク・ブグラー・ハーンのウヴァイスィーとして知られる高名な聖者と同じ名前なのです!)で、ときのカーシュガルのハーキムにしてトゥルファン郡王家に連なるズフルッディーンの庇護の下本書を完成させたといわれています。ズフルッディーンは当地文化の黄金期をつくりあげた文化功労者として新疆では常識の範疇に入る歴史人物ですが、こういう史書を書かせていたとは、文化功労者の面目躍如といったところでありましょうか。

本書はかなり興味深い内容満載なのですが、私はさきほど郵便屋さんから受け取ってささっと一読しただけですのでとてもちゃんとした感想など書けるものでもありません。ただ見るなり一箇所だけ気になった部分として、当写本の411葉表に赤インクで書かれた「管財受託状」は本当にtawallisaと読めるのでしょうか。アラビア文字テキスト(147p)でもTVLYHとタイプされているようですし、ここはtauliyaと読むわけにはいかないでしょうか。いささかマニアックですが、この単語はカーディ文書などには頻出する単語なので何とかスッキリさせたいものです。

ともあれ、本書に興味を抱かれた方は実物をお読みになることを強くお勧めします(といっても在庫がまだあるのかどうか、私は存じません。ごめんなさい)。

お問い合わせ:NIHUプログラムイスラーム地域研究東京大学拠点

|

« 辞書編纂はつらいよ-その2(なぜ歴史研究者が辞書を作るか) | Main | Uighur.jp新装開店 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 辞書編纂はつらいよ-その2(なぜ歴史研究者が辞書を作るか) | Main | Uighur.jp新装開店 »