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辞書編纂はつらいよ-秋の夜長に

唐突ですが,某栄々軒の都合で『現代ウイグル語語彙集』の増補改訂版を出すこととなり,月末締め切りの原稿作成に泣きそうになっています。これはもともと昨年度に出した『現代ウイグル語語彙集(附日本語-現代ウイグル語索引)』を言語研修とは別枠で出版する予定だったのですが,なにぶんにも私自身の怠惰(多忙とも言う)のために年度初めの出版申請のタイミングを外していたものです。このたび発行元の勝手な都合で(幸いにも)出版の目処が立ち,月末の締め切りに向けダッシュをかけている次第です。

しかし、校訂とはいえ辞書編纂作業とはきついものです。いちいち個別のデータをチェックしてエラーには修正を加えていくのですが、数万行のデータをひたすら見ていくのは大変疲れます。やっと終って紙に出してもまた少なからぬエラーが見つかってしまい、一体いつになったらこの作業は終わるんだろう、とかやはり考えてしまいますね。

Sozluk_3←旧版(2007年発行)のカヴァー

具体的には同じつづりの単語があって、それが同音異義語(homonym)なのか、それとも同じ語の異なった意味なのかという問題。これは語源までさかのぼって検討されるべき問題でして、そう簡単には判断できません。どうでもいいじゃん、という向きもあるかもしれませんが、辞書の構造上、この部分は結構重要なんですね。それから正書法の改変によって本書にエントリーされたものと綴りが変わってしまった語もいくつかあり、この取り扱いも悩ましい。それ以外にはもちろん普通の誤字脱字文字化けなどもあるわけです。約1万6千件のデータにつき、それらをひとつひとつ点検していくのは骨が折れます。


収録情報について、完全を目指すならば各単語の用例も収録すべきなのでしょうが、遺憾ではありますが今回もそれは見送ることとしました。用例はまっとうな辞書の「核」ともいうべき情報でして、その収集・編纂は独力ではとてつもなく長い時間と少なからぬ手間がかかります。用例収録に手を出して、歴史上のおびただしい辞書編纂の先達たち同様に「辞書に殉ずる」、などという勇気は私にはありません(のちのち、予算と人材確保ができたらとは思いますが…)。「編纂に携わった人間が一人も死んでいない辞書なんて、ろくなもんじゃない」とはよく聞く話ですが、それはひとごとだから言えるわけでして、やはりそこまで気(や血?)を吐いて辞書に命をささげたくはありません。だいいち辞書編纂は私のいくつかの「余技」のひとつなのですから(本業は歴史学?いや当面は「子育て」でしょうか…)。

しかし、それでも今回の語彙集は熟語をかなりエントリーして実用性の向上を目指しています。昨年は別冊だった接辞も収録して、かつ文法解説も冒頭部分に組み込みたい、と考えておりましてボリュームは旧版より100頁ぐらい増えてしまいそうです。収録語彙は現代ウイグル語見出し16,000語(但し熟語記載あり)、日本語見出しインデックス24000語(予定)、総ページ数は最大700ページ弱といったところ。事情が許すならば『語彙集』ではなく『小辞典』という名で出したいのですが、どうなりますやら。


この語彙集(辞書)は順調にいけばクリスマス前には出版されます。でも国立大学法人附置研究所の出版物なので非売品です(当然ながら、著者の私もボランティア)。ご入用な方は私までお問い合わせください。でも今から申し上げておきますが、これは「ないよりまし」といったレヴェルのものですよ。

以上ただただつらいと申し上げて本日はここまで。続報にご期待あれ。

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