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坂本勉編著『日中戦争とイスラーム』

坂本勉編著『日中戦争とイスラーム:満蒙・アジア地域における統治・懐柔政策』(東京:慶應義塾大学出版会、2008年)297頁

執筆者のお一人松長昭さんのご高配で恵贈いただきました(この場を借りてお礼申し上げます)。

本書は慶応義塾大学東アジア研究所の共同研究プロジェクト「近代日本のイスラーム政策とアジア主義」(FY2003-2006)の成果物という位置づけで、5名の執筆者が「満蒙から東南アジアへの日中戦争が拡大していく過程で戦略的重要性が高まるイスラーム教徒住民に対する日本の政策的取り組みを諜報・工作活動、統治・支配の面から解明する」(以上帯より)べく、それぞれの関心から健筆を振るっています。そのラインナップは以下の通り:

序(坂本勉) 
 「戦時日本の対イスラーム政策」
第1章(坂本勉)
 「アブデュルレシト・イブラヒムの再来日と蒙疆政権下のイスラーム政策」
第2章(白岩一彦)
 「南満州鉄道株式会社の諜報ネットワークと情報伝達システム」
第3章(メルトハン・デュンダル)
 「オスマン皇族アブデュケリムの来日」
第4章(松長昭)
 「東京回教団長クルバンガリーの追放とイスラーム政策の展開」
第5章(倉沢愛子)
 「「大東亜」戦争期の対イスラーム政策」

いただいた勢い(?)でざあっと一読してみましたが、本書の内容は一定の一貫性があって、序文に書かれているような編者の企図が十分に達成されているのではないかと思われました。これまでこの時期の日本とイスラームの関係は個別の論文やメモワールにあたるぐらいしか知るすべがなかったように思われるのですが、本書の各論文を読んでいけば、「日中戦争期」のムスリムたちの活動について詳細な情報と、史料についての知見がまとまって得られます。当該テーマについて一定の知識を得たいという方にはかなり有用な文献だと私には思われます。

もうひとつ評価すべき点はこの本が共同研究プロジェクトの成果としてプロジェクトの母体である慶応大学出版会から、しかもプロジェクト終了後1年の時間を置いてきちんと出版されているということです。私もいくつかの共同研究に関わっており、うち2つはいちおう代表者なのですが、このような律儀な成果が挙げられるかどうか自信がありません。そういう意味でも本書は優れて模範的なものとして学ぶところが多いのです。

※スペースの関係上個別論文についてはここでは触れません。ご関心がおありの方はお買い求めください。

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