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ヒヤルにヒヤリ

いきなりオヤジ・ギャグですみません。
ここのところ京都の「中央アジア古文書セミナー」の末席を汚す受講生のつとめ、というわけでもないのですが生真面目に新疆文書を読んでいます。所詮「門前の小僧」のままごとのようなものですけれども。

幾つか気になることがあり、調べたり、人に聞いたりしているのですが、気になったことの多くは識者に聞けばすぐ答えが出てくるんですね。「なあるほど」と思うことばかりで「勉強」にはなりますが、これでは「研究」とは言えません(面倒くさがらず私の質問に答えてくれた親切な皆さん、ありがとう)。困ったものです。

さて掲題の「ヒヤルにヒヤリ」です。「ヒヤル」(潜脱)とは私の乏しい知識を動員して説明するならば、イスラーム法のうえで実質的には脱法的な行為を屁理屈をこねて合法にしてしまうこすい手法のことですね(ぜんぜん学術的言い回しではない。いくぶんちゃんとした説明はこちら参照)。典型的な事例としてはイスラーム法では利子(リバー)の取得は禁じられているのだけれども、実際には架空の売買契約などを組み合わせることにより、賃料という名目で「事実上の利子」を貸し手が手にすることができるようにしているなどということがあります。

新疆で実際に「ヒヤル」という言葉が知られていたかどうか私は知らないのですが、利子の取得を可能とするために上述のようなこすい手段がとられていたことは確実で、契約文書にそうした架空取引の痕跡が明らかに見て取れます。私が気になっているのはそこでの文言でして、契約内容・条件が縷々かかれる末尾に利益を意味するintifa'という単語が登場するのです。この単語は所謂「リバー」とどうちがうと説明されるのでしょうか。ちなみにintifa'スタインガスではBeing useful, profitable, beneficial, availingなどとあり、新疆で同時代に出回っていた書式集のグロッサリーにもfa'ideと訳語が与えられていますから「利益」と看做してまず問題はなかろうと思います。まーprofitとinterestは違うから問題なかろう、と安直に割り切っていいものなのでしょうか。

文書は読めば読むほど分からないことばかり。法学の世界に立ち入ればこれまた大変難しいことが多くて手に負えない。ここでヒヤルの問題にぶち当たっても、そこは門外漢うかつなことは口に出せない。と、恐恐(ヒヤリ)としながら文書を読み、ものを書いている今日この頃なのでございます(ゆめゆめ鬼の首を取ったようなことは口にするまい)。

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